ゆっくり仕事をするインセンティブ

はじめに

早々に仕事を終わらせられるような能力があったとしても、合理的な判断をした結果、あえてゆっくり仕事をすることがあります。ここでは、労働者の立場になってみて、仕事をゆっくり行うかどうかの判断基準を検討してみましょう。

仕事を遅く行うメリット

重要な仕事だと思ってもらえる

具体的にどんなことをやったのか、どんな成果が得られたのかを知らない状態で、有能そうな人に「この仕事、意外と難しくて二徹くらいかかっちゃいました」などと言われると、とても大きな仕事を成し遂げたかのように見えます。そこに寝不足みたいな雰囲気が付いていると、なおさら苦労してやってくれたかのような感謝の気持ちが芽生えます。

これを逆手に取って、実際には簡単だった仕事の報告を遅らせることで仕事の成果を盛ることができます。ゆっくり仕事をすることで、この仕事は難しく、複雑で、重要なものなんだということを印象付けましょう。ただし、既に貴方が無能であることがバレている場合や、報告相手がその業務内容をよく理解している場合は逆効果なのでやめておきましょう。

残業代が貰える

ゆっくり仕事をした結果、定時を超えていると貰えるお金が増えます。お金を貰うために働いているわけですから、夜の予定がない日にはゆっくり仕事をして定時を超えることは理にかなっています。職場がみなし残業制度を採用しているとかで多少定時を超えた程度ではお金が増えないケースもあります。

横やりのタスクから自分を守れる

暇そうにしていると、どうでもいい雑用を押し付けられるリスクがあります。大抵、そういうときの雑用は成果として正しくカウントされない上に、一度引き受けると「貴方がやって当たり前でしょ」の雰囲気に持っていかれる大変危険なものです。ゆっくり仕事をしていると、それらの雑用を体よく断ることができます。

仕事を速く行うデメリット

めっちゃ疲れる

「早く家に帰って新作のゲームをやりたい」

そんな日には仕事が捗りますね。特に16時台の効率はめちゃくちゃよかったはずです。ナイスファイト。 それを普通の日に、しかも始業開始からできますか?できませんよね。サステナビリティがありません。全力疾走で長距離マラソンができないように、仕事を速く行うと体力を大きく消耗します。むしろゆっくり仕事をして、必要なときにスパートを掛けられるよう常に体力をセーブするのがむしろ合理的ではないでしょうか。

同僚からやっかみを受ける

自分が丸一日かけてこなしているような仕事を、同僚が一時間で完了させて上司に報告していたらどう思いますか?こちらの面目丸つぶれですね。自分は無能なのでしょうか。

仕事を速く行うと、そのようなメッセージを同僚に向けることになります。仕事が遅い人も、ゆっくり仕事をするインセンティブを実感しているので、効率的に仕事を終わらせる方法を教えるなんて余計なお世話です。 そのような無用な争いを避けるために、一番遅い人に作業ペースを合わせて職場の和を保ちましょう。

待ち時間が増えることがある

多くの仕事は、「会議の日までに、会議の資料を作っておく」「来週の月曜日までに、手紙を送る」のようにタイムリミットが設定されています。このような仕事を速く行ったところで自分の待ち時間が増えるだけで、むしろ「自分が作った会議の資料の内容を忘れる」「帰りに郵便局に寄るつもりが他の仕事をした結果忘れる」のような弊害が生まれる可能性が出てきます。 このような事態を避けるためにゆっくり仕事をして、タイムリミットぎりぎりに終わるように調整しましょう。

早く帰れるわけではない

間違っても「与えられた仕事がないので定時を迎えていませんが帰ります」とは言ってはいけません。会社は定時まで働くことを前提に給与体系を作っており、定時前に帰ることは会社に損害を与える行為であり、ひいては適切な仕事量を配分できていない上司への批判となります。残業は許されるのに不思議なところです。

ゆっくり仕事をして、せめて定時までは引き延ばしましょう。同僚が作った文書の「てにをは」のチェック、後輩の指導、社内事情のキャッチアップ、やれることはいくらでもあります。

評価されるわけではない

例えば、こんな状況を考えてみましょう。自動車の部品の修理が必要になり、整備工場に修理させたところ15分で直りました。その工賃に1万円も請求されたらびっくりしますよね。簡単なことをしてくれたに過ぎないのに、そんなに高額の請求をされるなんてなかなか受け入れがたいものです。

逆に、あなたがやる気を存分に発揮して高難易度の仕事を早急に片づけられたとしましょう。あなたは自分の成果は自分のおかげだということをわかっていますが、周囲は必ずしもそうは思っていません。実は簡単だったのでは?誰が助けてくれたのでは?運がよかったのでは?そういう可能性を見つけては、あなたの成果を割り引いて評価してきます。

仕事を速く行うメリット

客が喜ぶことがある

業務によっては客が喜ぶところが見えないこともあるし、客が喜ぶことに重きを置かない労働者もいます。

周囲からの尊敬度合いが上がることがある

仕事が速いやつは「できるやつ」で「すごいやつ」だと思う文化がある職場と、そうでもない職場があります

職場内での評価が高まることがある

上と同じ

昇進などの待遇の向上に繋がることがある

仕事の成果を正しく評価できていて、なおかつ昇給や昇進に繋げることができるような職場だと、労働者もこのメリットを実感することができます

仕事のノウハウが溜まる

単位時間あたりにこなす仕事が多いと、その分色々な問題に遭遇して試行錯誤をします。ノウハウが溜まり、職場の他のメンバーから頼りにされることもあります。

仕事を遅く行うデメリット

売り上げが下がる

ゆっくり仕事をした結果、間接的に会社の売上が下がるかもしれません。最終的に倒産するかもしれませんが、それをなんとかするのが経営者の仕事でしょう。

お客さんから怒られることがある

締め切りを破ると怒られます。期待は事前に下げておきましょう。

上司や同僚から怒られることもある

わざとゆっくりやっていると、似た仕事を経験している人にはバレバレです。

まとめ

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\text{「仕事を遅く行うメリット」} - \text{「仕事を遅く行うデメリット」}> \text{「仕事を速く行うメリット」} - \text{「仕事を速く行うデメリット」}
\end{align}

こんな感じの数式が成り立つと、仕事はできる限りゆっくり行ったほうが合理的だということになります。

中でも「仕事を速く行うメリット」は職場によって大小が異なる性質のものが多いようです。これが少なすぎる職場では、「ゆっくり仕事をするインセンティブ」ができあがってしまう可能性があります。

さいごに

あなたの職場はどんな感じでしょうか? 「仕事を速く行うメリット」はうまく設計されていますか?